Episode.3

指導者の役割・親の役割
これまでのまとめになってしまうかもしれませんが、改めて、「指導者の役割」とは何だと考えられますか?
そうですね、
まず、「指導者」っていう呼び方がどうなのかっていうのはやっぱりありますよね。
そう呼ばれるから指導しなきゃいけないって思うのかもしれない。 だからコーチとか今流行りのボスとか、そういう方がいいのかなって。

やはり「導く人」であるべきですし、先頭に立って引っ張っていく人でも良いですが、基本的には選手たちをどう導いてあげられるかが大事だと思います。それは我々が設計したものに乗っけるわけではなくて、選手たち自身が見つける夢や目標というものがベースにあって、それに対して我々がサポートする、お手伝いしていく、くらいのところでしかないんじゃないのかなって。

どうしても指導者というプレッシャーはありますし、何かしなくてはという想いは強くなりがちですが、でも私は、「人を変えること」は、できないと思っています。
私たちができるのは、「人が変わるきっかけ」を作ってあげることや、何かを与えてあげるとか、それが言葉だったりもしますが、それをいかにタイミング良く伝えていくことかなと思いますね。
「育てる」を考える上で、多くの情報があり、取り入れすぎると何が大切か見失いがちになります。
取捨選択していくための軸はありましたか?
目の前にいる選手たちはそれぞれ皆違いますから。
選手たちもチームによって全くレベルが違ったりと。

指導書という部分で参考にはなるものはたくさんあるかもしれませんが、それをそのまま利用できるものはかなり少ないんじゃないかなと思います。
大切なのは、それをどう翻訳して、どうアレンジして、目の前の選手たちにとって一番必要なものを選べるかっていう、そこがすごく大事なことだと感じますね。
そこの落とし込みができるかはすごく大事ですよね。
そりゃあもうたくさん失敗してきましたよ。
やっぱり色々なことやろうとしすぎたりとか、こっちの方がいいかなとか迷ったり。
それは今でもあります。当然トレンドは追っているので。

ただそれが今、目の前にいる選手たちにとってベストなのかっていう選択の部分。
あくまでも「自分がやりたいこと」ではなくて、「選手にとって必要なこと、選手の未来にとって必要なこと」を提供するっていうそこの折り合いがつくかどうかは大事ですよね。

こうあるべきだっていうのは自分の中であっても、でもやるのは自分ではなく選手なので。
選手たちが輝くことを一番に考えた時に、何が良いのかを考えてあげることが大切なのだと思います。
そうですね、よかれと思って色々言ってしまったり。こうやったほうが絶対いいのにっていう想いが強すぎたりして。
「思い込み」ですし、自分たちが思っている以上に選手たちは知らないことがたくさんあるわけです。
その前提で見てあげないと、「なんでできないの」っていう怒りになってしまう。

これは親御さんもそうですけど「なんでこんなことできないの」っていうフレーズって結構多いじゃないですか。でもやっぱり逆にそれは「ごめんね、それはちょっと伝えてなかったね」って言えるか。
知らないことだからこれは教えてあげなきゃいけないよねっていう、そういう思考になっていかないと自分が疲れちゃいますよね。
伝わらないストレスもありますからね。笑
そうですそうです。
やっぱり「伝わらない」ってことは、「伝え方が悪いんだな」っていう風に思えるか。

これは選手にも伝えていることですが、「自分に矢印を向ける」ということ。

これは、指導者自らがやらないと絶対変わらないと思います。

私も当然頭にくることはあります。日常生活でも人付き合いの中でも色々思うことはありますが、それはもう「俺が悪いんだな」って思うことで、その怒りをコントロールするというか。それができるようになってから、ですかね。また自分が変わったなって思います。
指導者として一番難しさを感じるのはどんな所でしょうか。
いや、ほとんど難しいことだらけですよ。笑
やっぱり人と人なので。いかに信頼関係を作れるかっていう。
言葉を伝える、想いを伝えることの前提として、その人への信頼がないと響かないと思うんですよね。いくら良いこと言っても。その信頼関係をいかに築くかという部分がやっぱり一番難しいですかね。どの年代でも。
信頼関係ですよね。
大事と感じながらもなかなかそこを掘り下げることって少ないのかなと思うのですが、 吉永さんは具体的に何か意識や努力されていることはありますか?
できるだけ同じ目線で話をすることもそうですし、良いことも悪いことも共有してあげる、そんな距離感でいることは大事かなと思います。「寄り添う」という表現が良いかもしれないですね。

側にいるとかではなくて、一人の選手に対して、想いを共感したり、真摯に向き合うことができるか。これは意外と大変で労力が必要だったりもしますが、そこにいかに時間を裂けるか、じゃないかなと思います。
良いところ、悪いところとは、 選手の良い点、悪い点含め、伝えられるかということでしょうか。
それもそうですし、その選手が良い状況でも、悪い状況でも寄り添えることもそうです。
単純に言えば、私はやっぱり「また会いたい」と思う人に、自分がならなきゃいけないなっていうか、そういう存在でありたいなと。そんなことは意識していますね。
本を読ませていただいて吉永さんのお人柄を感じましたし、お話を伺って改めて、皆さんが心から尊敬される監督さんとおっしゃる理由を実感しています。
自分ではわからないですけどね。
役職や年齢的にも、もっと違う自分でいくこともできるのでしょうけど、私はこれが楽というか。
ただ、あまり距離は感じさせない人間でありたいです。自分がどういう立場になっても。
ありがとうございました。
これまで、指導者の側面で伺ってきましたが、
「親御さんの役割」について、吉永さんの考えを伺いたいです。
基本的に役割はそんなに変わらないと思うんですよ。
親御さんも指導者も、選手たちを見守る、サポートしていく点では同じで。
ただ関わる時間は圧倒的に親御さんの方が長いので、やはり親御さんの影響は幼少期の頃からするとかなり大きいのは感じます。しかし、それがどこかのタイミングで、出会うべき指導者と出会った時に、指導者の言葉がより響くようになったりしてくる。その違いぐらいかなと。
伸びる選手の親御さんの共通点などは何か感じられますか?
そうですね、やはりスタンスしては「見守る」方が多かったかなと思います。
アドバイスすることもあると思いますが、色々言っても子供は聞いてくれないんですよっていう話もよく聞きました。

先ほどの「自分に矢印を向ける」話は、指導者も親御さんも一緒ですよね。
お子さんとの関わりで、何かうまくいかない部分があったら、親御さん自身も、関わり方や言葉かけ、立ち振る舞いなど、良い影響を与えていないのかなとか、そんな風に自分自身を見直せるかはすごく大事だと思います。
そんな視点で考えられるだけで全く接し方が変わってきますよね。
それに、そういう大人の姿を見るとやはり子供も、俺も頑張んなきゃって思うんじゃないかなと。そこが出来上がると、子供たちの自立(自律)という部分に繋がるのかなと思いますね。
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