Episode.2

メンタルについて
競技をするなかで「メンタル」ってどのように捉えられていますか?
初めてメンタルトレーニングの機会を得たのはアルバルクに移籍してからなんだよね。そのときに、メンタルトレーナーの方から「いいプレーができるかできないは7割気持ちで決まる」って言われて。

バスケのスキルが100あったとして、でもメンタルの状態次第ではそのスキルが120にもなるし、70、50にもなるってやっぱり自分自身も感じる。自信を持ってプレーしているときと、最近調子悪いとか感じながらプレーするのではもう真逆なくらいそこに向かう気持ちが違うよね。

半年の長いシーズン中、どうしても気持ちの浮き沈みは少なからず必ずあるから。調子いいなとか悪いなとか。もっとメンタル面にフォーカスしてトレーニングできたら波がなくやれるんじゃないかなって思う。
今後のことは分からないけど、将来的にもし自分がコーチ職に就いたら、半分はメンタル要素を取り入れたコーチになりたいって思ってるくらい。そのくらいメンタルって大事だなって個人的には思ってるよ。
現状のメンタルトレーニングの認知、重要度とは?
例えば練習後に自主練を1時間やりましょうってなったときに、自主練を30分削って、メンタルトレーニングを30分やるかってなったら、多分現状ではやっぱりスキル練習重視になってしまって、自主練1時間やった方がいいよねってなっちゃうのが現実。
個人的にはもっとメンタル面のトレーニングを取り入れられれば安定してパフォーマンス発揮できるって感じているけどね。でもこれは経験値を重ねたからこそ分かるところなのかも。やっぱり若い選手は練習してなんぼ、シュート打ってなんぼってなるから。このいつものシュートを外したら負ける、そういう局面をより多く経験しないとスキル以外のメンタル面とかへの重要度やトレーニング意識は高まらない、そんな感じはあるかな。
どのくらいの年代から取り入れていくのが理想だと感じる?
大舞台になればなるほどいつもの自分が出せない、緊張するとかやっぱりあると思うから。だからそれこそ小学生だって全国大会とか大舞台を経験するチームなどは、軽くでもそういうスキルやトレーニングを知れる機会があればいいと思うんだよね。そして中学生とか上手くなればなるほど、下級生のうちから先輩のなかに入って試合出場するっていうプレッシャーとかネガティブなものも含めて色々な葛藤を抱える選手も増えると思う。

そういうときの心の扱いを本人が知っていれば一番良いけどなかなか難しい。だから選手たちと関わる大人、監督や保護者が少し知識として持っているかっていうのも大事なんだと思う。でも実際、監督に打ち明けるってやっぱりなんか難しかったり。笑。
じゃあそのときにメンタルトレーナーの人に話してごらんっていうのもありだと思うし、保護者も何か困ったときに相談できる人がいるっていうのも重要なんじゃないかなって思うよね。
それはご自身の経験から感じること?
小学校で全国の舞台も経験したし、中学1年生のときから上級生に入って試合に出ることも多くあったからね。実際、自分の周りを見ても、ずっと上手かった選手がちょっとした挫折とかで立ち直れなくなったり、中学校ですごく有名で上手かったのに、高校で出てこなくなったとか。逆にそんなに目立たないタイプだった選手が最後まで上がってきたりっていうのもあるから。
能力高かったのに、ちょっとしたきっかけで、もういいやって諦めてしまったりする選手も実際多いと思う。だからそういうときに気持ちの整理ができて、切り替えてまた頑張れる力を持てると、もっと色々な才能ある選手が出てきて、将来的に活躍できる選手がより増える可能性があるよね。
育成年代から可能性ある選手を溺れさせないってことだよね。
うん、昔はやっぱりそこに時間やお金をさくっていうのは難しかったけど、今は重要度や認知も変わってきてチーム状況や考えによってはこれからもっと取り入れられて普及していくと思う。プロで取り入れられれば、そこからも大学、高校って広がっていく可能性は十分あるよね。
祥平くん自身のメンタルは?
奥さんから全く緊張しないタイプだと以前聞いたけれど。笑
元々緊張はそんなにしないタイプかもね。笑
なんでだろ、勝手に負けないと思ってる。心配にもならないよね。
だったら息子の試合を見ているほうがよっぽど緊張するよ。笑 自分じゃどうにもならないしどうしようもできないから。自分に関わることだったら、まあ、負けないでしょ、みたいな感じで思っちゃう。
それは相手がどんな上のレベルの場合でも?
そうだね、逆に相手が上すぎると、楽しみになるのかも。
相手も負けないと思っているだろうけど、自分も負けないって思ってるから、むしろ相手が思い通りにいかなくて、苛立ったり悔しがる姿を見れると思うとそれが楽しみになる。笑
それはすごい思考!笑
それができたら確かにワクワクするね。
うん、相手がやりたいことをやらせないというか、相手が考えていないような事態に陥れてやろうみたいな。 相手すごいのかな、強いのかなとはあまり考えないな。笑 だったらそれを上回ってやるよって思っちゃう。
それはやっぱり実力も伴ってできる思考なのかな。
やれることはやって臨むからっていうのはあるのかな。中途半端にやって負けるのは嫌だから、準備、練習、自分がやれることは全部やって、それで負けたら、じゃあ何が足りなかった?ってそこから考えられるからね。やることやらないで負けるのだけは嫌だし、中途半端にやっても本当に必要な次の課題が分からないよね。
実践でおすすめのメンタルトレーニング法は何かある?
以前、「なんで緊張するのか」っていう話を聞いたことがあって。
自分の力の及ばないところにフォーカスしてしまうと緊張しやすい。だから自分にできることにフォーカスしなきゃならないって。

例えば相手の強さ、調子とか、あとは会場の雰囲気、審判のコールとか。これは自分じゃどうにもできないこと。
だったらここを考えるのではなくて、自分にできることにフォーカスしていく。この試合だったら自分の役割として、これだけは絶対やっていこうとか。自分自身でできることだよね。

あとは、自分の力量以上のことを望むと緊張しやすいって。だからこの試合は絶対20点以上取りたいとか、この試合だけは活躍したいとかを考えちゃうと、緊張に繋がる。だったら何点取るとかじゃなくて、結果より過程を考える。そのためにこのプレーをするっていうその過程の行動部分にフォーカスできるようになるから集中しやすいって聞いて、確かになって思ったよね。

これまでの自分も無意識的だったけど、毎試合前に自分ができることを考えて「これをしよう。それで相手がこうしてきたらこうしよう」って気持ちで臨んでたね。だから緊張とかもそんなになかったのかもしれない。実際に自分がやっていることも、知識として学ぶと本当に大事なことだなって思ったよね。
ネガティブになったときの立て直し方などあれば教えてください。
「ざっくりしない」ってことかな。
例えば、今日調子悪かった、俺のせいで負けたって感じたのならば、そのざっくりの感じで終わらないというか。なんでそうなったのか?を考えて、一度全部書き出す。それを確認して、一つ一つ消していく(解決していく)。それをやっていけばある程度は、次の試合のときにはこうしようって行動が特定できて前に進めるんじゃないかな。
ざっくりしない、なるほどね!
どうしてそのやり方をやるようになったの?
よく「反省しろ!」ってざっくり言われるじゃん。そのときに、「ん?反省ってなんだ?」って思って、それでビデオを見て「ん?見てなんだ?」ってなってさ。笑
その「反省しろ」って言われたとき、チームは負けたけど、自分自身のプレー自体はそんなに悪いところはなくて。じゃあチームが反省するところってどこだろうって思って見たら、チームの意思が揃ってなかったとか、このときのワンプレーで流れもっていかれたなとか、色々考えたときに、これ全部細かく出したほうがいいってなって思って、自分自身の反省点も毎回試合ごとに全部書き出して消去(解決)するやり方でやるようになったね。
ノートの書き方とかおすすめはある?
以前聞いて面白いなって思ったのは、毎試合、「GOOD」「BAD」「NEXT」を全部書き出す方法。
日本人ってやっぱり真面目だから、振り返るとBADとNEXTがすごく多い。
でもアメリカ人とかはめちゃくちゃDOODが多くてBADが少なくてNEXTも多いんだって。

これをどんなに自分が良くなかった試合でも、必ず3項目の内容を書き出す。そして、もし可能であれば監督にもやってもらうとすごく効果的で。自分の書いたものが出来たら、監督が自分に書いてくれたものと見比べる。
もしその内容が一致していれば監督との意思疎通ができていて、自分の役割や期待値も共通認識が持ててるってことになるじゃん。でももし書いた内容が違っていたら、何かがズレてしまっている可能性がある。

なんで自分は試合に出られないんだろう、使ってくれないんだっていうのは、きっと自分と監督のこの3項目の内容に違いがあったり、それぞれの捉え方や考えが違っていたりする。これを取り入れるチームはみんなストレスなくというか、みんなちゃんと自分の役割を明確に全うしやすいというか。

試合ごとに各項目1つでもいいんだよ。「GOOD」一つ 「BAD」一つ「NEXT」一つでも。
これは保護者でも効果的でおすすめだよ。子供がその試合調子悪くてへこんでいる、監督にはこう言われた。そこで第三者として見ている保護者の「GOOD」「BAD」「NEXT」も応援している側からしたらこうだったよ、って伝えられる有効的な方法だと思う。
そういう取り組みとか思考って必然的にどんどん出てくるものなの?
やっぱり人って「本気度」が高いときに、色々なひらめきが出てくるものだと思う。本気でやってる人と適当にやってる人の発想力って全然違うよね。本気でやっているからこそ色々考えが出るし、発想もするから、そこからいいプレーが出たりもする。でもいい加減にやっている人は考えないからいいプレーにも繋がらない。出るっていったら、もう愚痴とか文句とか言い訳になっちゃうよね。
確かにね。そうだね。
祥平くんのそのエネルギー源や頑張り続けられている理由というのはどこにあるんだろう。
一番はやっぱり親かな。大学まではやっぱり両親。高校も大学も、やっぱり両親の援助のおかげでバスケをさせてもらっていたから、もちろん自分の意思もあるけど、どちらかというと両親の考えや意見優先だと思っていたから。
自分でちゃんとお金を稼げるようになってから、自分の意見を尊重しようと思ってたね。やっぱりスポーツ選手だし、親としては万が一怪我とかバスケができなくなったとしても会社員として残れる安心感から東芝を勧めたと思う。だからその東芝時代までは、感謝の気持ちというか、両親を安心させたい気持ちでやっていたかな。結婚して子供が産まれてからは、もちろん変わらず両親への気持ちはあるけど、家族への想いが大きいよね。
家族の支えはやっぱり大きい力だよね。
大変な思いとか我慢もさせてしまっているからね。その分やっぱり自分も頑張らなきゃって思う。

シーズン中は半年間、全く子供を遊びに連れて行くこともできないし、土日もないから。お正月、クリスマスとかイベントごとも全部試合で。だから一緒に遊べるのはほんとシーズン終わってのこの1ヶ月半くらいしかないんだよ。でも平日は子供たちは学校だから、実質この1ヶ月半の土日だけ。妻も子供たちもそこを理解して我慢して応援してくれている分、やっぱりそれが力になるよね。
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