そうですね。2007年の大学院時代に、当時稽古でペアを組んでいた先輩と共に、大学恩師より「形競技の世界大会ができる」ということでやってみないか?と勧めをいただきました。
これが正直、一番最初に形競技やるってなったときは、全然楽しさを見出せなかった。
やっぱり派手さがないし、一番は人が評価するものだから、やりがいを見いだせなくて。自分たちがいくら100%の力を発揮したと思っても、見る側が違うって思ったら評価にならない。
勝敗ラインがはっきりあるものではないので、そこに何か面白みってあるのかなって思っていました。
でもやっぱり自分は金丸先輩のパートナーを通じて、「受けの世界一」だと自信を持っていて。数ある柔道家、日本代表の人たちにも「すっごい受け上手いね」ってずっと言われ続けてきたんです。だから個人的にも、自分は受けが上手いんだなっていう自覚はあった。
でもそれは、誰も評価できるものじゃないし、そのこと自体に何か価値あるものではなかった。
しかし、もしそれが、大会に出て、自分が本当に受け身の世界一と証明できたら、それは価値あるものになるのではと考えたのです。
「自分は本当に世界一なのか?」それを確認する意味では面白いなっていう発想に切り替えてやり始めたときに、形競技にのめり込んでいくきっかけになりましたね。
モチベーションを上げるための目的はずっと探していたんですよね、きっと。
どうしようって葛藤みたいなものはずっとありました。
柔道の形競技は二人でやるものなので、自分がやる気をなくしていたらダメだなって。何か価値を見出さなきゃいけないって思っていて。それで自分のやる気と目的を、自分なりに紐づけた感じはありましたね。
今となっては、形競技でしか認められていない技が披露できたり、柔術の文化を広く知っていただける機会を創出していくことに使命感のようなものを感じていたりと、自分の中での意識が大きく変わり、競技の機会を与えてくださった先生に心から感謝しています。